こんにちは。大ちゃんです。
今回は学歴についてなぜ学歴が必要か、学歴によって給料が異なるのはなぜか、そして大学に行く価値は本当にあるのかについて考えてみようと思います。
特に大学に進学しようかどうか悩んでいる高校生の参考になれば嬉しいです。
なぜ学歴が必要なの?
文部科学省が公表している平成27年度学校基本調査によると、高校を卒業した人の大学・短大進学率は54.6%と過去最高を記録しており、現在の日本は高校を卒業すると二人に一人は大学または短大に進学しているのが現状です。
ここに進路に悩む高校生がいます。
僕が高校生の頃は上記のように適当に考えていましたが、ここではそんな疑問の参考になるようにそもそもなぜ大学に行った方が良いのか考えてみることにします。
就ける仕事が増えるから
まず一つ目の理由は大学を卒業すると将来就くことのできる職業が広がり選択肢が増える可能性が高まるからです。
簡単に言うと高校を卒業してから働きだすより、大学を卒業してから働き始めることの方ができる仕事が広がる、選べる仕事が増えるためです。
世の中の職業の中には例えば小学校や中学校・高校の先生のように大学を卒業して免許を取得しなければできない仕事があります。
先生のような免許や資格を持っていなければできない仕事に就くためには大学を卒業することが必要だからです。
大学に進学して学歴を付ける第一の理由は将来就くことができる仕事の選択肢を増やすためだと考えることができます。
もらえる給料が異なるから
大学に進学して学歴を付ける理由は仕事の選択肢を増やすためだけではありません。
二つ目の理由として高校を卒業して働きだすのと大学を卒業して働きだすのではもらえる賃金(給料)が異なるからです。
日本の企業では高校卒と大学卒では初任給(会社に勤め始めてから初めてもらえる給料)が異なります。
厚生労働省が公表している「平成27年賃金構造基本統計調査」では高校卒業では初任給が16万900円であるのに対し、大学卒業では初任給が20万2000円となっておりその差は4万円以上あります。
ここで「なーんだ、4万円か。4万ぐらいの差じゃあ別に4年間も大学に行く必要もないじゃん」と思われる方もいます。
では次に生涯賃金(一生に得ることができる給料の総額)についてみていくことにします。
「労働政策研究・研修機構ユースフル労働統計2015」の生涯賃金などの生涯に関する指標を見ると男性が一つの企業に勤めた場合の生涯賃金は大卒で2億7,710万円であるのに対し高卒は2億4,610万円となっています。
その差は約3,100万円あり、生涯に受け取ることができる給料に高卒と大卒とで3,000万円以上の差があると聞くとほとんどの人が大学に進学して学歴を付けようとするのも理解できるかと思います。
大学に進学して学歴を付ける二つ目の理由は高卒と大卒ではもらえる給料が異なり、大卒の方が高卒よりも多くの給料をもらうことができるためだと言うことができます。
なぜ高卒と大卒で賃金が異なるの?
なぜ学歴が必要なのかは分かっていただけたかと思いますが、ではなぜ高卒と大卒では賃金が異なるのでしょうか?
人材を採用する企業では学歴が高い人が欲しいのではなく、仕事ができる優秀な人が欲しいわけです。
高卒でも仕事ができる優秀な人もいますし、逆に大卒でも仕事ができない人もいるはずです。
ではなぜ大卒の方が高卒よりも賃金が高いのでしょうか。
ここからは高卒と大卒でもらえる給料が異なる理由について経済学で用いる理論で説明していこうと思います。
スキルが資本?「人的資本論」
高卒と大卒で賃金が異なる理由について、まず「人的資本」という考え方から説明することができます。
人的資本とは人間の能力や技術を資本と捉える考え方のことでヒューマン・キャピタルとも呼ばれます。
この説明だけでは分かりにくいと思いますので、分かりやすいように次の例を考えてみましょう。
全く同じ最新の設備や機械を備えたA病院とB病院があるとします。
あなたは重度な風邪をひいてしまい病院を受診しようと考えているとします。
A病院には経験が豊富なお医者さんがいます。
一方、B病院には経験が浅い新米のお医者さんがいます。
この時あなたはどちらの病院へ行きますか?
A病院、B病院とも最新の設備があるにもかかわらず、ほとんどの人はA病院に行って経験が豊富なお医者さんに診てもらおうと考えるはずです。
つまりA病院の方がB病院より良いと考えてしまいます。
この時、あなたがA病院の経営者である場合、自分の病院に優秀な人間に来て働いてほしいと思うのであれば、働いてもらう医者に支払う給料を少なくともB病院より高く設定して優秀な人間にB病院へ行かせないようにすることでしょう。
これは企業が人材を採用する際にも当てはめることできます。
採用活動をする企業は、「大学で4年間学んだ人間は高卒の人間よりも能力や技術などの人的資本を蓄積したはずだ、人的資本を蓄積した人間であるならば優秀でありきっと会社に利益をもたらしてくれるはずだ」と考えます。
「俺は4年間一生懸命勉強してきた。だから俺はかしこくて優秀なんだ。」
優秀な人間に自社を選んでもらいたいという考えが高卒に比べて大卒の給料が高い理由だと結論づけることができるのです。
「人的資本を蓄積した人が会社に利益をもたらす。」
簡単に言うと「4年間大学で学んできた人は優秀である。だから高い賃金を支払う。」
学校教育が生産性を向上させるという考え方が人的資本論の考え方です。
見た目が大事?「シグナリング理論」
高卒と大卒で賃金が異なる理由について、「シグナリング」という考え方からも説明ができます。
シグナリングとはコストのかかる行動をとることで自分の本気度や能力を相手に伝えることを言います。
ここでも分かりやすいように例を出します。
例えばあなたは高級自動車を販売しているお店に行ったとします。
そこのお店の店員は、スーツを着て高級な腕時計を身につけた身なりの良い紳士やアクセサリーや高級バッグを持っている高貴な女性などお金持ちに見えるような人には良い対応をします。
しかしそのお店の店員は学生や子ども、またみすぼらしい格好をしている人には対応どころか相手にしようとしません。
このようにこの世の中は見た目で判断されてしまうことがよくあります。
もしあなたがお金をたくさん持っていてそのお店で売られている高級自動車が欲しい場合、どういった行動をとればよいでしょうか?
「人は見た目で判断してはいけない。大事なのは中身だよ」とよく言われますが、上記の例のように実際にそのような状況になってしまったらあなたはどう対応しますか。
お客さんであるあなたは自分の身なりや態度を変えようとすることでしょう。
これを企業が人材を採用する際にも当てはめると、企業が学歴で判断することを知っているのであれば、あなたが大学を卒業することで「俺は△△大学に合格したんだぞ。だから俺は努力ができる頑張り屋だ!(ドヤ)」ということを企業に示すことができます。
大学進学という費用と時間がわざわざかかることをあなたが行うことでその実績を示すことができるということです。
「コストのかかる行動をやってのけたということ=学歴」であり、その学歴が努力や能力を企業に伝えるシグナル(信号)となるからです。
つまり学歴を付けることによって企業にシグナリングができるということです。
シグナリング理論では大学で何を学んだということは関係なく、「△△大学○○学部の入学試験に合格できる能力がある人は優秀だから高い賃金を支払う」ということを表しています。
日本は学歴社会で頭の良い大学に行った方が良いとよく言われるのはこのシグナリング理論に基づいているためです。
高い学歴の人は学歴によってその優秀さが証明されるのがシグナリング理論の考え方です。
その仕事に学歴は必要?「オーバーエデュケーション」とは
ここまで高卒よりも大卒の方が給料が高い理由を経済学の二つの理論を使って解説しました。
これまでの話から考えると大学に進学した方が仕事の幅が広がり給料も多くなるということでやはり大学に行って学歴を付けた方がこれからの人生は有利になると考えることができますが、果たして大学に行って学歴を付けることはメリットだけなのでしょうか。
ここでは大学に進学するデメリットも考えてみようと思います。
オーバーエデュケーションとは?
冒頭にも書きましたが現在の日本の大学進学率は50%以上です。
そのため日本では「オーバーエデュケーション」という状況になっているとも言われています。
オーバーエデュケーションとは過剰教育という意味です。
どういうことかというとその仕事に就くためにはその学歴は必要ないのではないかという状況のことです。
大学に進学して学歴を付けるメリットに就ける仕事が増えると書きましたが、世の中には大学を出ないと就けない仕事ばかりではありません。
むしろ大学を卒業しなくても就ける仕事の方が圧倒的に多いのです。
例えば高校生が10人いるとします。
現在の日本の大学進学率が5割ですのでその高校生のうちの5人が大学に進学し大学生になったとします。
残りの5人は高校を卒業後、そのまま会社に勤め働き始めました。
そして4年後。大学生は就活の時期です。
5人の大学生は就職活動をしますが、就活が終わり大卒向けの仕事に就けたのは2人だけでした。
結果、残りの3人は高卒でも就労可能である学歴不問の仕事に就くことになりました。
このように大学を出ても大卒向けの仕事に就ける人と高卒でも就労可能である学歴不問の仕事にしか就けない人がいます。
この3人のように大卒の人が高卒でも可能な学歴不問の仕事に就くと「オーバーエデュケーション」という状態になってしまいます。
よく大学生が「就活で何社も受けたのに落とされて全然内定がもらえない」と嘆いているにもかかわらず、人手不足と言われたり、有効求人倍率(仕事を探している人1人あたりに対して何件の求人があるかを示した値)が上昇していて売り手市場だと言われたりするのはこのオーバーエデュケーションが背景にあると考えることができます。
学歴はあるがそれに見合った仕事がないといった状況がミスマッチを生み出していると考えることもできるのです。
学費と奨学金
現在国立大学に通うと年間で学費は授業料のみで53万5,800円。私立大学(文系)では授業料のみで86万4,384円かかります。そしてこの値は年々増加しています。
※これに入学金や施設設備費等もかかります。
参考文部科学省「平成26年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査」
4年間大学に通うとなると国立でも最低で200万円以上、私立では400万円は必要になります。
また大学生のうち51.3%の人が奨学金を受けています。
(日本学生支援機構「奨学金受給者率(大学昼間部)2014年」)
大学を卒業しても奨学金の返済を抱えている状態でオーバーエデュケーション、つまり学歴不問である賃金の安い企業にしか就職することができなかった場合、奨学金の返済が生活の負担となることがあり社会問題にもなっています。
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大学を卒業しても結局、学歴不問の仕事にしか就けなかった場合、もらえる給料が高いといった恩恵を受けることができなくなります。
現代の日本社会ではパートやアルバイト・派遣社員といった非正規雇用が4割を超えており必ずしも大学を卒業したからといって正社員になることができる保障はどこにもないのが現状です。
大学に行くべきか?
大学進学率が上がるにつれて大学を卒業するという価値がだんだん薄れていってきています。
そのため上記で説明したシグナリング理論は近年では通用しなくなってきており、人的資本論、つまり学生のうちに何を学んで何を考えてきたのかが重視される傾向になってきています。
今回は学歴と賃金の関係について説明してきましたが、大学進学にかかるコストとそれに見合う価値があるかどうかを判断するのは他の誰でもないあなたです。
どうかこれを読んだあなたには高校生だった時の僕のように安易に決めるのではなく自分の未来のことなどよく考えて大学に進学するかどうか決めていただけたらなあと思います。
また大学は学歴を付けにただ勉強しに行くだけの場所ではありません。
どんな仕事に就くにせよ大学で学んで考えたことや考え方はその後の人生の役に立つはずです。(ただし真面目に勉強した場合だけかなと今は思います。)
そして大学という場は同世代の人と学ぶという環境の中で、自分と異なるいろいろな価値観に触れたり自分がどんな仕事に向いているのかが分かる場所だったりもします。
学歴は一つの武器となりえますが、学歴の他にもさまざまな武器を身に着けることが大切だと僕は思います。
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