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こんにちは。大ちゃんです。
今回は過酷な環境で本気で働いた末、うつ病になり無職になった僕が厚生労働省の就業支援ポスターについて思ったことを書いてみようと思います。
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目次
厚労省「キミはまだ本気出してないだけ」
厚生労働省(以下厚労省)が「ニート」と呼ばれる若年無業者を対象に作った就業支援ポスターについて3か月ほど前(2016年2月頃)に話題となりました。
(曖昧になる前に定義しておきますが、「ニート」とは就学、就労、職業訓練のいずれも行っていないことを意味する用語であり、日本では、15〜34歳までの非労働力人口のうち、通学しておらず、家事を行っていない「若年無業者」を指しています。)
本題に入りますが、ポスターには、「キミはまだ本気出してないだけ。」というキャッチフレーズが、中年男性の漫画キャラクターとともに大きく描かれています。
このポスターのキャラクターは青野春秋さんの人気漫画『俺はまだ本気出してないだけ 』の主人公・大黒シズオ。
大黒シズオは、会社を突然辞めて漫画家を目指す、40代のフリーターという設定。
(僕はこの漫画を読んだことはありませんが、すでにこのキャラクターが会社を辞めて漫画家を目指すという設定から就職する気はないのだろうと思いますが、そこはとりあえずおいといて…)
このポスターは昨年2015年12月から、全国160カ所ある「地域若者サポートステーション」(通称:サポステ)と呼ばれる就業支援施設と全国全ての市町村で掲示されているようです。
参考厚労省が「キミはまだ本気出してないだけ」をニート支援に選んだ理由とは|THE PAGE(ザ・ページ)
「本気」って何ですか?
このポスターにある「本気」の文字。
漫画では本気を「マジ」と読む場合もありますね。
辞書を引くとこう書かれてあります。
- ほん‐き【本気】[名・形動]
-
まじめな気持ち。真剣な気持ち。また、そのさま。「―を出す」「―で取り組む」
-
めんこなどの子どもの遊びで、勝てば相手の出したものを取れるというルール。ほんこ。
(デジタル大辞泉から転載)
- ほんき【本気】( 名 ・形動 ) [文] ナリ
冗談や遊びなどでない,本当の気持ち。真剣な気持ち。また,そのような気持ちであるさま。 「 -を出して頑張る」 「彼の言ってることはどこまで-なのかわからない」
(大辞林 第三版から転載)
つまり本気とは「真面目な気持ち」、「真剣な気持ち」といったところでしょうか。
本気を出したらうつ病になり無職になった僕
ここからは僕の体験談に基づく話ですが、僕は少なくとも大学時代は「本気」で就職活動をし、大学卒業後の就職先では「本気」で仕事に取り組みました。
就活も本気で100社もの選考を受け、そして就職してからは仕事に対していつも「本気」、つまり真面目で真剣に取り組んできました。
僕は就職してからも毎日毎日仕事に本気で取り組んだ結果、心身共に壊れてしまい入社してからわずか4か月でうつ病になり退職せざるを得ない状態となりました。
僕は現在療養に専念しており、うつ病の症状が安定しないため求職活動は行えません。
「ニート」の内訳
先に定義しておきましたが、「ニート」にもさまざまな人がいます。
「ニート」と聞くとあなたは「働けるのに働かない若者」というイメージをされることだろうと思いますが、ここからは実際の統計資料から考察していきたいと思います。
若年無業者が求職活動をしない理由
(クリックすると拡大します。)
少し古いですが、平成22年(2010年)に厚労省が発表した「厚生労働省職業能力開発局キャリア形成支援室」の資料『勤労青少年を取り巻く現状について』によると、若年無業者が求職活動をしない理由として最も多いのは「病気・けがのため」が28.7%で3割弱にも上っています。
特に求職活動をしない理由を就業経験がある人に絞ると「病気・けがのため」が32.3%と3割以上にも上っています。
また、求職活動をしない理由として2番目に多い理由は「進学や資格取得などの勉強中」が12.3%で特に大学卒業者に絞れば20.4%と2割強を占めています。
さらに2007年に厚生労働省の委託により実施された調査『ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究』 によると、「ニート」の中の実に半数近い49.5%が2007年時点で引きこもりで、精神科または心療内科を受診した経験があるという結果が出ています。
これは10年ほど前の調査ですので、現在はこのような人はもっと増加しているのではないかと推測されます。
ちなみに求職活動をしない理由として「急いで仕事に就く必要がない」という内訳はわずか6.1%です。
つまり、「ニート」の内訳は「働けるのに働かない人」というのはわずかで、「働きたくても働けない人」の方が圧倒的に多くその差は5倍というのが事実です。
「本気を出していないだけ」という厚労省は鬼
ここまで読んできたあなたは本気で就職して本気で働いた結果、病気やけがになり「ニート」にならざるを得なくなった人にまだ「本気を出せ」と煽りますか。
しかも遠回しに「キミはまだ本気だしていないだけ。」などと言えますか。
これは勉強を頑張っているのに親が「もっと勉強しろ」、うつ病の患者さんが症状に苦しんでいるのに家族が「もっと頑張れ」、就業時間外なのに会社の上司が「もっと働け」と言っているのと同じでまさしく厚労省が「ブラック化」しているのではないでしょうか。
また本気で進学や資格取得などの勉強をされている方もいらっしゃいます。
「病気・けがのため働けない人」や「進学や資格取得のために本気で勉強している人」も同じニートと呼ぶには語弊があるように感じます。
そして厚労省は上記の調査結果で病気やけがでニートとならざるを得なくなった人が3割もいるという実態を把握しているにもかかわらず、働いたために心身共にボロボロとなったニートや求職者に対してこのポスターのキャッチコピーのようにさらに「本気を出せ」と鬼のような対応をしていると思うのは僕だけでしょうか。
本気を出すのは厚労省の方
僕も当ブログで仕事や労働に対する意見をちょこっと書いていますが、2016年現在、日本は長期に渡る経済成長の低迷に伴い労働基準法を守らない「ブラック企業」や会社にこき使われやがて捨てられる「社畜」と呼ばれる人々が増えてきているように感じます。
最近たびたびニュースで話題となる過労死や過労自殺、長時間労働や過労による自動車事故。
このような劣悪な環境で働かされる社員を守るため「ブラック企業」の排除に厚労省は「本気」を出しているのでしょうか。
厚労省がニートは「働けるのに働かない若者」というステレオタイプ型の見方をしてこんなポスターを作っているのだとしたら呆れるばかりです。
こんなポスターで「働きたいのに働けない人」や「真面目に真剣に働こうとしている人」に変な偏見が助長されないのか僕は危惧します。
厚労省は働かない(実際は働けない)若者が増えているという「結果」だけに対策をするのではなく、なぜ働きたくても働けない人が増えたのかという「原因」に向き合い対策をするのが先ではないでしょうか。
「キミは本気出していないだけ」。
この言葉をそのまま厚労省の役人に言ってみたいものです。