ある朝、突然、体が動かなくなった。
頭では「行かなきゃ」とわかっているのに、家から一歩も出られない。
呼吸が浅くなり、勝手に涙があふれてくる――
そんな日が、僕の転落の始まりだった。
会社を辞め、収入が途絶え、「働けない自分」を責め続けた毎日。
孤独と不安に押しつぶされそうな中で、僕を救ってくれたのは、意外にも“1本のブログ記事“でした。
この記事は、うつで働けなくなった僕が「書くこと」と出会い、少しずつ回復していった体験を綴ったリアルな記録です。
「誰にも言えない…」
「何もできない…」
と感じているあなたにこそ、読んでほしい。
今は何もできなくていい。
でも、言葉はあなたを救ってくれるかもしれない。
そんな僕の体験記です。
目次
「もうダメだ」と思ったあの日のこと
会社に行けなくなった朝
ある朝、目が覚めた瞬間に体が動かなかった。
頭の中で「起きなきゃ…!」「仕事に行かなきゃ…!」と何度も繰り返すのに、体が重くて行こうとするのを必死で阻止する。
呼吸も浅くなり、心臓がバクバクと音を立てる。
泣こうとしていないのに勝手に涙が出てきて、「なんで?」という思いだけが頭の中をぐるぐる回っていた。
それが、僕が“会社に行けなくなった”最初の日だった。
誰にも頼れず、部屋で泣いていた日々
その日から、部屋に閉じこもる日々が始まった。
友人とも連絡を絶ち、心配をかけたくなくて何も言えなかった。
ただただ、時間だけが過ぎていく。
カーテンを閉めた部屋で、布団の中に丸まり、誰にも気づかれずに泣く。
そんな毎日だった。
あの日はちょうど近所で夏祭りが開催されていて、静かに聞こえてくる賑やかな音楽や祭囃子が余計に僕の心を虚しい気持ちにさせた。
「甘えてるだけ」
「怠けてる」
「自分が弱いだけ」
そんな声が、誰に言われたわけでもないのに、頭の中で聞こえてくる。
SNSも開けなかった。
楽しそうな投稿を見るだけで、自分がいかに取り残されているかを突きつけられるからだ。
ただ、「このままじゃいけない」と思う気持ちは、ほんのわずかにあった。
でも、どう動けばいいのか、どこから抜け出せばいいのか…
この時は何も見えなかった。
働けない毎日と、自分を責める気持ち
頭ではわかっても、心が追いつかない
「休むことも大事」
「無理しない方がいい」
頭ではそう思っていた。
ネットの記事や動画でも、うつの症状についてたくさんの情報を見ていたし、「今は回復の時期なんだ」と何度も何度も自分に言い聞かせた。
けれど、どうしても自分を責めてしまう。
「他の人は働いているのに、なぜ自分は何もできないんだろう…」
「回復って言ってるけど、ただ怠けているだけなんじゃないか…」
気づけば、そういう思考に飲み込まれていた。
夜も眠れず、気力もなく、ただスマホを眺めたり、何もせずに天井を見つめていたり。
何かをしたくても体が動かない。
心がどんどん置いてけぼりになっていく感覚だった。
お金、将来、社会…不安に押しつぶされる
会社を辞めたことで、当然ながら収入はなくなった。
最初は少しの貯金があったが、通院にもお金がかかるので、それも日に日に減っていく。
次の仕事なんて想像もできなかったし、面接に行ける状態でもなかった。
「このままずっと働けなかったらどうしよう…」
「社会から取り残されたまま、人生終わるのかな…」
そんな言葉が、ふとした瞬間に浮かんでは消えず、胸の奥にずっと居座っていた。
自立支援医療制度や生活保護など、行政の支援制度も調べてはみたけれど、病院に行くのが精一杯で手続きをする気力も湧かない。
そもそも人と話すこと自体が怖かったし、何より「自分なんかが助けを求めていいのか?」とさえ思ってしまっていた。
孤独と無力感に押しつぶされるような毎日。
でも、ある日、ほんの小さな「きっかけ」に出会う。
それが、1本のブログ記事だった。
きっかけは、偶然見た1本のブログ記事だった
「こんな人もいるんだ」と思えた安心
ある夜、眠れずにスマホをいじっていたとき、偶然1本のブログ記事に出会った。
タイトルは「うつで働けなくなった僕が、生き延びるためにやったこと」。
気づけば、その記事を食い入るように読んでいた。
書いていたのは、自分と同じようにうつを経験し、会社を辞めた人だった。
文章はどこかぎこちないけれど、飾らず、等身大の言葉で綴られていた。
その中に、自分とまったく同じような気持ちや行動があって、驚いた。
「ひとりじゃない…!」
それが、最初に心に浮かんだ言葉だった。
誰かが同じような苦しみを経験し、しかもそれを言葉にして残してくれている。
その事実が、ほんの少しだけ、僕の胸を温めた。
書いてみたい。でも自信がない…
記事を読み終えたあと、「自分も、こんなふうに何か書いてみたいな」と思った。
でもすぐに、もう一人の自分がブレーキをかけた。
「誰も読まないよ」
「どうせ中途半端で終わる」
「恥をさらすだけじゃないの?」
そんな声が頭の中に響いた。
それでも、その夜は不思議と眠れたのを覚えている。
なぜなら、久しぶりに、少しだけ前向きな気持ちになれた気がしたからだ。
そして翌日、僕は重い体を引きずるようにして、パソコンを開いた。
ブログを作るためのサイトを検索したくて、「無料ブログ 始め方」と打ち込んだのだ。
僕の最初の一歩は、小さなクリックからだった。
はじめてのブログ。はじめての“出口”
誰にも見られなくても書き続けた
最初の投稿は、ほんの数行だった。
「うつで働けなくなりました。今は無職です。毎日しんどいけど、なんとか生きています。」
そんな短い文章を、ブログに投稿した。
誰にも見られていないのに、手が震えていた。
でも、不思議なことに、投稿ボタンを押した瞬間、少しだけ気持ちが軽くなった。
「自分の気持ちを、どこかに出せた」という感覚。
それが、すごく新鮮だった。
それから、日記のようにブログを書き始めた。
何を食べたか、眠れたか、どんな気分だったか。
誰かのためではなく、自分のために言葉を綴った。
反応なんて気にしていなかった。
ただ、「書くこと」が唯一、自分を保つ手段になっていた。
書くことで少しずつ、自分が戻ってきた
毎日少しずつでも文章を書くうちに、自分の中に変化が起き始めた。
過去の出来事を振り返る中で、「あのとき、無理してたな」「自分の気持ちを無視してたな」と気づく場面が増えてきた。
言葉にすることで、気づける感情がある。
文字にすることで、過去と少しずつ和解できる。
そんな感覚が、自分の中に芽生えていた。
いつの間にか、1日中寝ていた生活から、日中にブログを書く習慣ができていた。
たとえ人に会えなくても、社会とどこかでつながっている気がした。
ブログは、出口の見えなかった僕の心に、小さな“通気口”を開けてくれたのだ。
ブログがくれた、小さな自信と希望
共感コメントがくれた「生きてていい」の感覚
ブログを続けて数ヶ月ほど経った頃、初めてコメントが届いた。
「今の私とすごく似ていて、涙が出ました。あなたの文章に救われました。」
画面越しの見知らぬ誰かが、僕の言葉に反応してくれた。
その瞬間、心がじんわりと温かくなった。
それまで、自分の存在には何の意味もないと思っていたけれど、「書くこと」で誰かとつながれる。
それだけで、生きてていいんだと思えた。
“共感”というのは、想像以上に力を持っていた。
誰かの気持ちに触れ、誰かに自分の気持ちを届ける。
それは、自分が“まだ人間でいられる”という確認作業だったのかもしれない。
小さな収益と、「もう一度やってみよう」という気持ち
ある日、本格的にブログを書いていこうと決意し、ブログに広告を掲載して収益を得ることができるグーグルアドセンスに申請してみた。
正直、仕組みもいまいちよくわからなかったが、何気なく記事の末尾に広告リンクを貼ってみた。
それから数日後、初めての収益が発生した。
たったの41円。
でも、その金額を見たとき、心の底から「自分にもできるかもしれない」と思った。
お金そのものよりも、「社会と再びつながれた」ことが嬉しかった。
少しずつ、新しい記事のアイデアが浮かぶようになり、読者を意識した文章も書けるようになっていった。
「こんな自分でもまだできることがある」
「もう一度、何か始めてみたい」
ブログが、その気持ちを思い出させてくれた。
あの頃の自分に、伝えたいこと
働けなくても、大丈夫
もし、あの頃の自分に一言だけ声をかけられるなら、こう言いたい。
「今は動けなくても、何も失ってないよ。大丈夫。」
働けない自分を責める必要なんて、本当はどこにもなかった。
休むこと、止まることは、逃げじゃない。
再び歩くために必要な時間なんだと、今になってようやくわかった。
社会から外れた気がしていたけれど、それでも“生きてる”という事実だけで、十分に価値がある。
そして、誰かの言葉が救いになるように、自分の言葉もまた、“誰かの灯り”になることがあると知った。
何かを始めることに“遅すぎる”はない
ブログを始めたのは、心がどん底に沈んでいたときだった。
「今さら何かを始めたって…」と、何度も思ったけれど、始めてみたからこそ、今がある。
たった1本の記事が人生を変えることもある。
たった1つの「やってみよう」が、自分を助ける道になることもある。
もしかしたら今、この記事を読んでくれているあなたも、過去の僕と同じような状況かもしれない。
そんなあなたに、そっと伝えたい。
「大丈夫。焦らなくていい。書くことは、きっとあなたを助けてくれる。」
まとめ:書くことで、僕はもう一度「自分」を取り戻した
うつで働けなくなったとき、僕はすべてを失ったように感じていました。
社会から取り残され、誰にも頼れず、ただ毎日を耐えるだけ。
そんな日々の中で出会ったのが、1本のブログ記事でした。
その記事が教えてくれたのは、「誰かの言葉が誰かを救う」ということ。
そして僕自身も、自分のために書き始めたブログを通して、少しずつ前を向けるようになっていきました。
- 誰にも読まれなくても、自分の気持ちを吐き出す場所があること
- 共感してくれる人が、世界のどこかにいること
- 少しの収益が、「もう一度挑戦してみよう」と思わせてくれること
そのすべてが、僕にとって小さな“光”でした。
あの時、ブログを書き始めていなければ、今の自分は存在していません。
うつや無職という経験は、できれば避けたかったことです。
でも、そこから何かを始めたことは、僕の人生にとってかけがえのない転機でした。
もしあなたが今、過去の僕と同じような場所にいるのなら――
焦らなくていい。
何もしなくていい。
でも、もし少しだけでも「書いてみようかな」と思えたら、その気持ちを大切にしてください。
ブログは、あなたの孤独を静かに受け止めてくれます。
そしてきっと、あなたの言葉は、どこかで誰かの心に届きます。
最後までお読みいただきありがとうございました。